医師転職の悩み

【専門医はいらない?】将来を考えて取得すべきかについて解説します

2017年から新専門医制度が始まり、これで4年が経過しました。
これまでは特に専門医を取得しなくても、ある意味"医師"という資格があるだけで特に問題なくやっていくことができました。
実際に現在も特に専門医を持たずに勤務したり開業している先生もたくさんいますからね。

 

ではこの先の将来的なことを考えた場合、専門医を取らなくても果たして大丈夫なのでしょうか?
もちろん現段階ではまだまだ分からないこともあります。
しかしここから先の流れを読んでいくと、頑張って専門医までは取得しておく方が絶対によいと考えています。

 

専門医を取得するとなると、いろいろ大変ですから本当は取ってもメリットがないのであればそんな苦労はしたくないですよね。
しかしそんな苦労をしてでも、今後のことを考えると取っておくことを強くお勧めします。

 

これまで医局長を経験してきたので、専門医制度についてもある程度精通はしています。
そういった観点から見ても、専門医を取らないことのリスクの方が高いんじゃないかと考えています。

 

ではなぜ苦労してでも専門医を取った方が良いのか、その理由について順に説明していこうと思います。

 

専門医制度とは

 

2017年から新専門医制度というものが発足しました。
日本専門医機構が中心となって、19の基本領域と24のサブスペシャリティ領域を作りました。
この中で重要なのが、19の基本領域というものです。

 

具体的にはどのような科があるかといいますと

19の基本領域

  • 内科
  • 外科
  • 小児科
  • 産婦人科
  • 精神科
  • 皮膚科
  • 眼科
  • 耳鼻咽喉科
  • 泌尿器科
  • 整形外科
  • 脳神経外科
  • 形成外科
  • 救急科
  • 麻酔科
  • 放射線科
  • リハビリテーション科
  • 病理
  • 臨床検査
  • 総合診療科

 

現在はこの19の診療科があります。

 

さらにその上にサブスペシャルティとして、内科、外科、放射線科についてはさらに細分化された専門医となる予定です。

 

23のサブスペシャルティ

1.内科領域

  • 消化器病
  • 循環器
  • 呼吸器
  • 血液
  • 内分泌代謝
  • 糖尿病
  • 腎臓
  • 肝臓
  • アレルギー
  • 感染症
  • 老年病
  • 神経内科
  • リウマチ
  • 消化器内視鏡
  • がん薬物療法

2.外科領域

  • 消化器外科
  • 呼吸器外科
  • 心臓血管外科
  • 小児外科
  • 乳腺
  • 内分泌外科

3.放射線領域

  • 放射線治療
  • 放射線診断

 

現在の専門医の実態

これまでの専門医は、各学会の主導で専門医制度を作っていました。
そのためあまり統一されたものではありませんでした。
しかし新専門医制度では、日本専門医機構が中心となって専門医の制度全体を動かしていくことになっています。
専門医取得者の能力を機構が担保するために、専門医を維持していくための条件も以前よりは厳しくなっています。

 

現在はまだ移行期間中のため、専門医の中にも学会認定の専門医と機構認定の専門医が混在しています。
しかし今後はすべて機能認定専門医に移行していくことになる予定です。

 

ちなみに令和元年9月現在の各学会の専門医数は以下となっています。

各基本領域の専門医数

専門医 学会認定専門医数 機構認定専門医数
認定内科医 34,429 名 0 名
小児科専門医 12,261 名 4,337 名
皮膚科専門医 6,774 名 0 名
精神科専門医 11,539 名 0 名
外科専門医 23,335 名 0 名
整形外科専門医 19,349 名 7,322 名
産婦人科専門医 13,454 名 4,003 名
眼科専門医 11,006 名 0 名
耳鼻咽喉科専門医 8,746 名 3,839 名
泌尿器科専門医 6,572 名 251 名
脳神経外科専門医 6,252 名 1,681 名
放射線科専門医 7,729 名 204 名
麻酔科専門医 8,781 名 0 名
病理専門医 2,538 名 1,472 名
臨床検査専門医 525 名 140 名
救急科専門医 5,023 名 62 名
形成外科領域専門医 1,572 名 1,184 名
リハビリテーション科専門医 1,888 名 643 名
総合診療専門医  -- --

日本専門医制度概報 (令和元年(2019年)度版)より

 

最後の総合診療専門医については、日本専門医機構が中心となって作成中で、専門医の認定ははこれからといった状況です。
また機構認定専門医数についても、科によってはまだまだ移行が進んでいないところもあるようです。

 

こうやってざっと見ると、どの科の先生が多いかというのもよく分かりますね。

 

現在の医師数と今後の医師数

 

専門医の数については分かりましたが、現在の医師の数というのも気になりますよね。

 

こちらは厚生労働省が出しているのですが、2018年12月31日現在で327,210人となっています。

 

平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

 

先ほどの学会認定専門医数を単純に足すと18万人ぐらいにになりますから、それに該当しない人もまだそこそこたくさんいるということになります。

 

とはいえ、今後医師の数はさらに増えていきます。
大学の医学部の定員も増やしていますから、当然ではありますよね。

 

実際に2016年と比べて2018年の医師の数は7,730人(2.7%)増加しています。
また2006年には医師は277,927人だったので、12年間で5万人近く増えているのですからね。

 

これだけ急激に医師の絶対数が増えているということは、当然今後競争が激しくなるということが予想されるわけです。

 

 

今後の専門医の必要性は?

 

これまでは専門医を取得しなくても、医師という資格があるだけで十分働いてくることができました。
しかしここまで述べてきたように、以前と比べて医師の供給数自体は明らかに増加してきています。
そう考えると、将来的に専門医を持たない医師が同じ土俵で勝負をできるかと言うと少々不安は残ります。

 

またこれからドクターになっていく人たちは、ほとんどの人が

研修医→専攻医→専門医

という流れで専門医を取得していくことになると予想されます。

 

そうなると専門医を取得しなかった場合、これまでのように安定してやっていけるという保証はしがたいところがあります。
もし医師の数が供給過剰となった場合、専門医を持っていないと当然評価が下がる可能性があります。
そんなことが将来起きても全然おかしくない状況になりつつあると言えます。

 

とはいえ、専門医を取るとなると、研修プログラムに属したり、試験を受けたりといろいろ大変です。
もし専門医にならなくてもデメリットがないのであれば、別に頑張って取る必要もありませんからね。

 

専門医を取らないことのデメリット

 

では専門医をもし取らなかった場合、具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか。
順番に考えていきましょう。

 

1.専門科を提示できない

患者さんから

「何がご専門のドクターなんですか?」

って聞かれた場合、返事に窮してしまいますよね。

 

また転職するような場合にも、どの科が専門科かというのを示すことができませんよね。
もしライバルがいるような状況では、当然不利に働いてしまうことでしょう。

 

そのほか開業するような場合、現在は専門医を持っていなくても自分のやりたい科を標榜することが許されています。
しかし今後専門医制度が普及していくと、新たに開業する場合には専門医以外は科の標榜が許されなくなる可能性も当然出てきます。
そうすると自分の開業したい科で開業すること自体が難しくなってしまうかもしれません。

 

2.患者さんからの信頼が低くなる

先ほどの患者さんからの質問でもそうですが、何を専門にしているかがはっきりしていないと当然信頼されにくいですよね。
いくら医師国家試験に受かったとはいえ、いまの世の中では患者さんもしっかりした能力がある医師に診察・治療してもらいたいと思う人がほとんどでしょう。

 

病院のホームページでチェックしてくる患者さんも増えていますから、何科が専門かが分からないようだと医師として怪しまれてしまう可能性があります。
そうるなると病院からも採用されにくいという状況にもなりかねません。

 

3.医療行為が制限される可能性

現在は医師国家資格さえあれば、どのような医療行為を行っても許されています。
しかし時代とともに専門性は非常に高くなってきています。
それに伴って、医療行為自体も"専門医取得者以外はしてはいけない"というものが徐々に増えてくる可能性があります。

 

それは技術的なことに限らず、使用できる薬剤などについても制限が出てくる傾向にあります。

 

たとえばここ最近発売された"エムガルティ(ガルカネズマブ)"という片頭痛の予防薬があります。
この薬を処方するにあたっては、PMDAが定めた"最適使用推進ガイドライン"によって処方できる施設が制限されています。

 

具体的には

 

施設について
片頭痛の病態、経過と予後、診断、治療(参考:慢性頭痛の診療ガイドライン2013))を熟知し、本剤についての十分な知識を有している医師(以下の<医師要件>参照)が本剤に関する治療の責任者として配置されていること。
<医師要件>
以下の基準を満たすこと。
医師免許取得後 2 年の初期研修を修了した後に、頭痛を呈する疾患の診療に5 年以上の臨床経験を有していること。
本剤の効果判定を定期的に行った上で、投与継続の是非についての判断を適切に行うことができること。
頭痛を呈する疾患の診療に関連する以下の学会の専門医の認定を有していること。
・日本神経学会
・日本頭痛学会
・日本内科学会(総合内科専門医)
・日本脳神経外科学会

最適使用推進ガイドライン ガルカネズマブ(遺伝子組換え)より

と明記されています。

 

これまで抗がん剤などの高額な薬剤については、施設の基準や臨床経験が問われることがほとんどでした。
しかしこの薬剤では、専門医がいないと薬剤が処方できないという制限がついています。

 

ですから、今後特殊で高額な薬剤については、専門医でないと処方できないというケースが増えてくる可能性があります。
病院にとっては収益の上がる薬ですから、それが使える医師というのは逆に重宝されることになるでしょう。

 

専門医を取らない場合は、今後このようなデメリットが出てくると予想されます。
しかも大部分の医師は専門医を取得する流れとなると、さらにその勢いは加速していくのではないでしょうか。

 

専門医を取得するには?

 

これまでは専門医を取得するには、各学会に所属してその規程を満たせば取得することができました。
しかし新専門医制度に移行してからは、基本的に専門医機構が管理することとなっています。

 

まずは2年間の研修医期間をクリアし、希望する19基本診療科の専攻医となります。
そこで専門研修を規程年数行ったうえで、専門医試験に受かって晴れて専門医となるといった流れです。

 

ただその専攻医になる段階で問題となるのが

どこかの専門研修プログラムに所属しないといけない

ということがあります。

 

専門研修プログラムを主に作成しているのが、各大学の医局です。
ですから大学の医局に所属しないと専門研修プログラムを受けられないという問題が出てきます。
これが嫌だという方もきっと多いんじゃないでしょうかね。

 

医局に所属すると、いろいろなしがらみができてしまいますし、自分の好きなように働くこともできなくなってしまいますからね。
それをどう考えるかというところではあります。

 

"専門医を取得するまでは修行"

と考えて、専門医を取るまでは我慢するというのも一つではないかなぁと思います。

 

最近は専門医取得可能な病院へも転職ができるらしい

 

これまでは専門医を取ろうと思うと、大学の医局に入局することがほぼ必須でした。

 

しかし最近の医師転職サイトを見ていると

勤務中に専門医取得も可能

と謳っている募集病院もちらほら見かけます。

 

どうしても大学の医局に所属したくないという方は、このような病院への転職を考えるのも一つかもしれません。
専門医も取れて、転職もできるならば一石二鳥ですからね。

 

おすすめの医師転職サイトについては、以下の記事も参考にしてください。

転職
【医局長経験者が語る】医師の転職サイト・エージェントのおすすめ

続きを見る

 

将来を考えると専門医を取った方が良いでしょう

 

というわけで、今回は専門医を取得すべきかどうかについて考えてきました。

 

正直なところ、現時点では専門医を持っていなくても明らかなデメリットはないようにも感じます。
実際に取得していない人もかなり多いですからね。
しかし今後は間違いなく専門医を取得する医師が増えてくるという流れは加速していくと思われます。

 

そうなった場合、専門科を持たない単なる"医師"と言うだけで、どこまで評価されるのかということです。
専門医を持っている医師と比較された場合、いくら技術があったとしても当然劣ってしまうことは避けられませんからね。
そういった将来の不安をなくすためには、とりあえず専門医取得まではしておく方が良いんじゃないかと個人的には考えています。

 

以前と比べて専門医取得までが簡単ではなくなっているのは事実です。
特に専門研修プログラムに所属しないといけないというのはなかなかハードルが高いと思われます。
しかし将来の自分の価値を高めるためにも、専門医を取得するまでは修行と考えて大学の医局に所属して頑張ることをお勧めします。
または最後で触れたように、専門医取得をサポートしてくれるような病院に就職するというのもひとつです。

 

大学の医局に所属したりするのは、ちょっと鬱陶しいかもしれません。
しかし将来のことを考えて、専門医を取得してしまうまでは修行と思って過ごした方が良いんじゃないかなぁというのが持論です。

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